2016年夏頃から、多弦ベーシスト界を中心に広まっていったInyen Vina(IYV)。
7弦、8弦を始めとした多弦はもちろんのこと、奇抜なボディシェイプ、果てはファンドフレットといったマニアックな仕様でも対応可能で、激安でフルオーダーできることから、一時期SNSで話題になっていました。
IYVブームが去った2018年現在、話題に上がることはめっきりなくなり情報を入手する手段が少なくなってしまいました。
そこで、実際にIYVでオーダーをした私がオーダーの流れや実際どうだったのかレビューしていきたいと思います。
今後オーダーを考えている人はぜひ参考にしてみてください。
Inyen Vina(IYV)とは
Inyen Vina Co., Ltd(IYV)は1994年に設立されたベトナムのホーチミンにあるギター・ベースメーカーです。
【Inyen Vinaの公式サイト】
http://inyenvinaguitars.com/
韓国の会社が出資していて、世界最大規模の楽器ショーとして有名な「NAMM Show」にも出店しているれっきとしたメーカーです。
TanatosのOEM生産をしていたというネット上の書き込みもあり、AliExpressによくある粗悪なコピーモデルを作っているメーカーとは違い、それなりに実績があるようです。
そこで培った経験を活かすことで、多弦やファンドフレットといったマニアックな仕様も対応できるようになったということでしょうか。
ハイエンドメーカーには到底敵いませんが、楽器としての精度は最低限保証されています。
「価格相応」という表現が一番正しいでしょう。
値段の目安
楽器本体+送料+国際送金手数料+関税が掛かります。
私の場合は、800ドル+160ドル+手数料2500円+関税5000円=約113,000円でした。
(けっこう高いw)
それでは各項目を見ていきましょう。
楽器本体
ブームの初期は4〜5万円ほどでオーダーできたようですが、変◯仕様のオーダーが殺到したことや、日本人の求めるシビアなセッティングやクレーム、更には支払いが遅れるユーザーが複数いたことから値上げされたようです。
現在は800〜1000ドル(8〜10万円)ほどでしょうか。
送料
一律で160ドル(約17,000円)のようです。
輸送方法ですが、国際郵便の「FedEx」が使われ、国内に入ってからは日本郵便の「ゆうパック」で届きます。
どちらも配達に関しては大手の会社なので、よく分からない配送業者を使われることもなく安心ですね。
問い合わせ番号も教えてくれるので、逐一輸送状況を確認することができます。
国際送金手数料
ゆうちょ銀行の「口座あて送金」が窓口で説明を受けながら手続きでき、手数料も2500円と安かったのですが、2018年5月7日から5000円に改定されました。
これにより、普段お使いの銀行の方が手数料が安いことがありますので、これからオーダーをする人は注意してください。
ちなみに国際送金をする時にマイナンバーカードが必要(通知カードでOK)ですので、振込先の連絡が来た時に焦らないように事前に準備をしておきましょう。
関税
海外から商品を輸入した際、関税というものが掛かるのですが、もちろんIYVのギターも例外ではなく関税を支払う必要があります。
ギター到着から1週間ほどで、支払通知書が入った封筒がFedEXから自宅に届きます。
私の場合は5000円請求されました。
関税の支払いというと複雑で難しそうというイメージがありますが、コンビニに代行収納の紙を持っていって支払うだけなので超簡単です!
身構える必要はありません。
オーダーにかかる日数
私の場合は初めて連絡をしたときから到着するまで約2ヶ月掛かりました。
RY Guitarのオーダーで15ヶ月待った経験があったので、あまりの早さに逆に心配になりました←
以下が時系列になります。
日時 | 内容 |
2017/12/31 | オーダーの仕様をまとめたメールを送信 |
2018/01/02 | 仕様を見て見積り金額を教えてくれる。 「金額に同意してもらえれば製図を始めるよ」的な内容が来ました。 |
2018/01/09 | 1回目の図面が送られてくる。 なかなか良い仕事をしていますが、ポジションマークやボリュームトーンの位置といった細かいところがイメージと違ったので修正依頼。 修正依頼をするとだいたい2日後には直した図面を送ってくれます。そんなこんなで2回修正のやり取りをしました。 |
2018/01/19 | 3回目の図面が送られてきて、希望通りの仕様になったのでOKの返信。 完成まで1ヶ月掛かるとのこと(早い) |
2018/02/01 | 音沙汰なかったので進捗確認のメールをすると、製作途中のネック部分の画像が送られてきました。 問題ないので進めてくれと返信しました。 |
2018/02/09 | いきなり完成の連絡が来ました。 前回から日数も経ってなかったのでびっくりしました。 |
2018/02/15 | ゆうちょ銀行で国際送金の手続きが完了。 |
2018/02/22 | 入金が確認できたので発送したとのこと。 FedExの追跡番号も教えてくれました。 |
2018/02/26 | 無事に到着しました。 |
オーダーの流れ
まずはIYVに作りたい楽器の仕様を連絡します。使用言語は英語のみですが、google翻訳を使い、分かりづらいところは参考画像を添付することで理解してもらえます。
最初は「Contact us」の問い合わせフォームから送信したのですが、届かなかったみたいなので、HPの一番下に記載しているメールアドレスに送ったところ無事返信が来ました。
最初からメールで連絡することをオススメします。
↓
IYVから仕様をもとに見積りの金額が送られてきて、その金額に納得したら図面を描き始めます。
↓
しばらくすると図面が送られて来るので、そこから修正があれば参考画像を駆使しつつその旨を伝え、自分が納得するまでやり取りをします。
↓
仕様が確定すれば製作に入ります。催促をすると途中経過の画像を送ってくれます。
↓
完成後、振込先の連絡が来るので国際送金で支払いをします。
↓
入金確認後(1週間くらい?)発送されます。
↓
到着
オーダーシートを英語で送る際の文例
ベトナムにあるギターメーカーですが、全て英語でのやり取りになります。
英文メールを送る際の項目や書き方をまとめましたので、是非参考にしてみてください。
次の文章を元に自分の仕様に書き換えていただければと思います。
【頭語】
Dear Mr. 〇〇,
【前文】
I am 〇〇 from Japan.
I would like to order custom electric guitar.
Can I order the specifications below?
【本文】
Specs:
◯strings guitar,
Body: quilted maple top, mahogany back, 〇〇shape (*image1)
Color: black cherry (*image2)
Neck: neck through, maple and walnut 5p
Neck shape: standard U
Fingerboard: ebony
Head: quilted maple, matching head, 3:4 shape(*image3)
Fret: 24frets, stainless steel, medium jumbo
Radius: 305R
Scale: 648mm
Nut: carbon 46mm
Inlay: mother of pearl small dots (φ4mm)
Pickup: 2 humbuckers, with escutcheon
Bridge: fixed hard tail
Parts: black color
Control: 1vol, 1tone, 3way toggle switch, coil tap switch (*image4)
Binding: white color, neck and head (not in body)
【末文】
I’m looking forward to hearing from you soon.
【結語】
Regards.
【署名】
〇〇
総評
届いて簡単にセットアップした状態のIYVは、正直な話まともに弾けたものではありませんでした。
ネックが逆反りしていたのは輸送による寒暖差もあるので分かりますが、それでも指板に汚れがあるし、チューニングも狂いやすいし、PUの音もモッコモコだし…
私の場合は、ペグをゴトーのマグナムロック、ナットをカーボン、PUをEMG(7弦用)、ブリッジをHIPSHOTに交換したのでそこそこ使えるギターになりました。
主観ですが、これでエ◯ワーズらへんのギターとトントンかなといった感じです。
楽器店ではなかなか置いていないパーツは、サウンドハウスにお願いすれば海外から取り寄せてくれます。
私は7弦用パーツを購入したのですが、EMGの公式ページのURLを記載して取り寄せをお願いしたところ、商品ページすらなかったEMG 81-7H、EMG 85-7Hも取り寄せてくれました。
納期は3週間くらいでした。
HIP SHOT / 7 String Fixed .125 Guitar Bridge Black
もしヘッドレスギターのような特殊なギターをオーダーしたい人がいましたら、リプレイスメントパーツの入手まで考えたほうが良さそうです。
グレードアップするためのパーツがない→しょぼい→売る の流れになるかもしれません。
そう考えると、勢いでオーダーしたものの結局手放すことになった人達の気持ちも分からなくもないです。
おわりに
憧れのオーダーメイドギターを格安で手に入れられるIYVですが、品質に関しては値段なりというのが正直な感想です。
私の場合は、ギター本体11万+交換パーツ3.5万+α調整・メンテナンス代なので、使えるギターにしようと思うと最終的に結構いいお値段がします。
有名メーカーの形を真似した、コピーモデルのオーダーも受け入れてしまうというのも賛否両論あるところだと思います。
実際にオーダーした私の感想ですが、今思うのはこれくらいの金額を出すならKIESELにオーダーしたほうが良さげということですw
実際に音楽で生活しているプロも選んでいるメーカーですし、ユーザー数が段違い。
皆さん相変わらずの暑さですが、大丈夫ですか?今日はるばるアメリカからギターが届いたでごわす٩( ‘ω’ )و pic.twitter.com/TV3IqVUYbF
— you(official) (@you_g0724) 2018年7月30日
My new gear… pic.twitter.com/97dyW2VZMC
— スカイフォビ山@はちげんぐらし (@Seku_Guitar) 2015年8月11日
5周年ワンマンのラスト トップ20 すげー楽しかった この日の為にオーダーした世界に一本だけのギター 活躍してくれたぜ 赤いショートケーキ。(´∀`凸) pic.twitter.com/wLT4d3t1o8
— Sick² ジェネ★様(´∀`凸) (@sick2_gene) 2018年2月28日
かういうIYVは、大学生や私のような貧乏リーマンを中心としたユーザー層です。
購買意欲がそそられる写真はネット上にたくさんありますが、音源のうpはほとんどない…
これが全てを物語っているのではないでしょうか。
YouTuberのヒカキンさんも「安物買いの銭失い」はオススメしておらず、仕事道具や本当に欲しいものにはお金をかけるべきだと考えています。
これは業界を問わず成功している人の共通点だと思います。
最後の方で酷評してしまいましたが、自分はIYVにオーダーしたギターを気に入っています。
というのも、モッキンバードシェイプで7弦を作れるってなったらESPぐらしかありませんし、6弦のスタンダードな仕様で見積りが80万くらいだったので、精度は雲泥の差ですが100万近くするからです。
IYVの使い方ですが、市販のギターでは満足できない、でも自分が欲しい仕様に全て対応したオーダーできるメーカーがない、という需要を埋める最後の選択肢として使うのがいいと思います。
オーダーを考えている方には、後悔のない買い物をしてほしいと思います。
質問等ありましたら、分かる範囲でお答えしますのでお気軽にコメントください。
最後までお読みいただきありがとうございました。